ポルまいと学ぶ!DMX over IP
ポルカ「麻衣ちゃん、文化祭お疲れ様!」
麻衣「ポルカ、お疲れ様」
ポルカ「みんなのステージ、すごかったなぁ〜!照明もすごい豪華だった!」
ポルカ「ねえねえ、麻衣ちゃん照明機材の設定もやってくれたんだよね!ああいう機材って、どうやって動かしてるの?」
麻衣「ああいう機材は、この照明卓で... その前に、DMXについて説明する必要がありそうね」
ポルカ「DMX...?」
麻衣「概念としてはそこまで難しいものではないわ。まず最初に、DMXのはじまりから見ていきましょう」
DMX?何それ?知らん?らん!
ポルカ「DMXってなに?」
麻衣「DMXを一言でいうと、照明機材を制御するための共通規格ね」
麻衣「DMXが登場する前は、各照明機材メーカーがバラバラの制御方式をとっていたの」
麻衣「しかも当時はアナログ制御が大半で、機能=チャンネルごとに線を1本ずつ用意する必要があったわ」
ポルカ「チャンネルごとに?」
麻衣「そう。チャンネルが10個ある機材なら10本、それが何台もあったら...」
ポルカ「ケーブルだらけになっちゃう!」
麻衣「用意するのも大変だし、舞台裏はケーブルの海よ。ポルカなんか、絶対どこかで足ひっかけるでしょうね」
ポルカ「エヘヘ...」
麻衣「そこで、アメリカで策定された標準規格がDMX512というものよ」
麻衣「今までバラバラだった制御方法を統一して、さらにデジタル信号を使うことでたくさんのデータを1本のケーブルで送れるようになったわ」
ポルカ「このつまみが並んでいる機械でDMXのデータを送るの?」
麻衣「そうよ。このつまみはそれぞれ機器の機能に対応していて、たとえばこれを上げるとライトが光るわ」
ポルカ「光った!すごいすごい!」
麻衣「DMX512では、名前の通り512個の機能を1本のケーブルで操作できるの」
ポルカ「そんなにたくさんあったら十分だね!」
麻衣「DMX512が出てきた当時は、ね」
麻衣「その後にムービングライトみたいなチャンネル数をたくさん使う機材が出てきて、結局DMX512でも膨大な配線作業をしないといけなくなったの」
ポルカ「えぇ〜!そんなにたくさん配線作業があったら麻衣ちゃんが大変になっちゃうよ!」
麻衣「わ、私は別に大丈夫だけど... 」
DMX over IPの誕生
麻衣「その後、照明業界はEthernetに目をつけるわ」
麻衣「ポルカはEthernetって知ってる?」
ポルカ「いー... インターネット?」
麻衣「違うけど...意外と遠くはなかったわね...」
麻衣「Ethernetというのは、パソコンどうしを有線でつなぐ規格ね。インターネットはその上で動くもの。LANケーブルは使ったことない?」
ポルカ「あ!LANケーブルはWi-Fiルーターの設定をするときにおばあちゃんが買ってきたよ!」
ポルカ「間違ったところにさしちゃって、抜こうとしたんだけど二人とも抜き方がわからなくて、引っ張ったらプラスチックみたいなのが折れちゃったんだ!エヘヘ...」
麻衣「あれはツメを押しながら引っ張るのよ!」
麻衣「そのLANケーブルの規格がEthernet。LANケーブルはDMXケーブルとは比べ物にならないくらいの情報量を送受信できるから、照明機材同士もこのケーブルで繋いでしまおうという発想ね」
麻衣「さらに、照明機材同士をLANケーブルでつなぐと他にもいいことがあるの。IPベースでの通信ができるから、普通のスイッチやルータで照明ネットワークを組むことができる」
麻衣「簡単に言うと、インターネットと同じ仕組みや機材で照明も制御できるようになるわ」
麻衣「文化祭のときに使ったルーターやスイッチも一部は私の私物だし」
ポルカ「麻衣ちゃんの家にいっぱい積んであった光る箱、ライブでも使ってたんだ〜!」
麻衣「光る箱って... とにかく、そういう理由からEthernet上でDMXを送受信する機運が高まって、Art-NetやsACNというプロトコルの誕生につながるの」
Art-NetとsACN
麻衣「Art-NetやsACNの話をする前に、プロトコルについて理解してもらわないといけないわね...」
ポルカ「プロトコル?って何?」
麻衣「ポルカもWebサイトを見ると思うけど、そのときにhttp://とか見たことあるでしょ?」
ポルカ「ある!」
麻衣「あれが通信プロトコル。パソコンとパソコンが通信するときに、送るデータを事前に取り決めておかないとうまく意思疎通がとれないの」
麻衣「プロトコルは階層構造になっていて、上のプロトコルは下のプロトコルに支えられて動いている」
ポルカ「いきづらい部にとっての麻衣ちゃんみたいな感じだね!」
麻衣「HTTPはTCPというプロトコルの上で動くけど、Art-NetやsACNはUDPというプロトコルの上で動くわ」
ポルカ「TCPとUDPは何が違うの?」
麻衣「うーん、簡単に説明すると、普通の通信にはTCPが使われて、リアルタイム性が重要なプロトコルにはUDPが使われるという分け方かな」
ポルカ「たしかに、照明機材はタイミングが大事そう!」
麻衣「そう、その通りね」
Art-Net
麻衣「まずは、Art-Netについて見ていきましょうか」
ポルカ「麻衣先生!お願いします!」
麻衣「Art-Netは、IP上でDMX信号を送受信する、一番最初に普及したプロトコルよ」
麻衣「UDP上にシンプルに複数のDMXユニバース情報を送信することができるわ」
麻衣「あ、ユニバースというのは512個のチャンネルのかたまりで、DMXケーブル1本分と考えてもらえたらわかりやすいと思う」
ポルカ「LANケーブル1本でDMXケーブル数本分の情報を送れるようになったんだね!すごい進化!」
麻衣「そう。ただ、初期版のArt-Netにはツッコミどころも結構あって」
麻衣「ブロードキャストといって、同じネットワークにいる機器に無条件にDMXデータを送っちゃったり」
麻衣「当時は空いてたみたいだけど、2.x.x.xという明らかにプライベートIPじゃない範囲を推奨しちゃったり...www」
ポルカ (よくわからないけど、麻衣ちゃん楽しそう)
麻衣「そうした問題点は、バージョンアップで修正されていく」
麻衣「Art-Net IIでは、ブロードキャストじゃなくてユニキャストが推奨されるようになったの」
ポルカ「ゆにきゃすと?」
麻衣「全員に向かって叫ぶんじゃなくて、相手を決めて話しかける感じね」
ポルカ「あ、それなら教室でもそっちのほうがいいね!みんなに叫んだら先生に怒られるもん」
麻衣「経験者の言葉は重みが違うわね」
麻衣「今は、ArtPollという機能でネットワーク上の機器を探して、見つかった機器にそれぞれユニキャストで送るのが一般的みたい」
麻衣「まとめると、Art-Netは照明の現場で必要になる機能を一通り詰め込んだ、オールインワンのプロトコルって感じね」
sACN
麻衣「そんな全部盛りのArt-Netに対して、sACNは必要最小限の機能に絞ったプロトコルなの」
麻衣「Art-NetではDMXの送受信以外にも、機器発見などの様々な仕様があったでしょ?」
麻衣「それに対してsACNは、DMXデータを送り届けることに特化しているわ」
麻衣「DMXの送受信に特化したおかげで、どの卓から来たデータかを見分けたり、優先度をつけたりする仕様も充実しているわ。卓が2台あっても、メインが止まったらバックアップに切り替えるみたいなことができるの」
ポルカ「Art-Netがなんでもできる器用なプロトコルなら、sACNはデータを送ることに特化した専門家なんだね!」
麻衣「まあ、そんなところね」
麻衣「さらに、sACNはネットワーク的な美しさも併せ持っているの」
麻衣「Art-Netはブロードキャストからユニキャスト、機器発見の併用へとネットワークをツギハギで設計していたところがある」
麻衣「sACNは最初からユニバースごとにマルチキャストアドレスを用意することで、ネットワークがとてもきれいにおさまる」
麻衣「まさに、シンプルさを追求した美しいプロトコルよね」
ポルカ「麻衣ちゃんはこっちのほうが好きそう!」
おわりに
麻衣「ポルカ、少しは照明機材の制御について理解できた?」
ポルカ「うん!最後のほうはちょっと難しかったけど、わかってきた気がする!」
ポルカ「でも、DMXケーブルがLANケーブルになっても、結局ケーブルはいっぱいあるんだね...」
ポルカ「また足ひっかけちゃいそう...」
麻衣「それなら、無線でDMXを送る方法もあるわよ」
ポルカ「えっ、無線!?」
麻衣「誰でも使える標準規格はまだないけど、事実上の標準みたいな方式はあって、現場ではもう使われてるみたい」
ポルカ「じゃあ全部無線になったら、ケーブルにひっかからずに舞台裏でいくらでも踊れるね!」
麻衣「そういう話じゃないと思うんだけど...」